画像提供:ウィキペディア photo by Paul Dickover
伝道師 ジョージフォアマンは教会で神の教えを説いている。
彼は元プロボクシング 世界ヘビー級チャンピオン。
・1998年、メキシコシティオリンピックで金メダルを獲得。
・1969年10月7日、プロデビュー。
この年13連勝(11KO)、翌年12連勝(11KO)。
・1971年5月10日、NABF北米ヘビー級王座を獲得。
・1973年1月22日、ジョー・フレージャーを2ラウンドKOで倒し、統一世界ヘビー級王座を獲得。
・1973年9月1日、東京・日本武道館でホセ・ローマンを相手に統一世界ヘビー級王座初防衛(1RKO)。
・1974年10月30日、モハメド・アリに8ラウンドKOで敗れ、王座から陥落した(キンシャサの奇跡)。
41戦目でのキャリア初黒星となった。
・1977 年3月17日、ジミー・ヤングに最終回12ラウンドにダウンを喫して判定負け、引退。宣教師としての生活を送る。以上 ウィキペディアより
戦績を見ただけでもジョージ・フォアマンが如何に偉大なボクサーかは想像つく。
ですが、ジョージ・フォアマンが真の輝きを放つのはこれからなのです。
スポンサーリンク
復帰後初の世界タイトルマッチをむかえたジョージ・フォアマン
1991年、42歳でむかえた世界ヘビー級タイトルマッチへの挑戦は、10歳以上も若い王者、イベンダー・ホリフィールドとの対戦でした。
予想ではチャンピオンのホリフィールドが圧倒的に有利。
一方的な試合展開になると思われました。
しかし、フォアマンはフルラウンドを戦い切りました。
ラウンドのインターバルでも椅子に座ることなく最後まで経ち続けたのです。
試合は判定で敗れはしたものの、彼が見せたファイティングスピリットは観客たちの心を打ち、スタンディングオベーションの中、試合終了を告げるゴングが鳴り響きました。
「老いは恥ではないのだよ。」
試合後、彼が口にした言葉には「深さと重み」がありました。
その言葉は当時の中年男性に勇気を与えました。
挑み続ける精神こそが最も重要なのだと。
挑戦に年齢は関係ない。
それを信じて貫ける人には、全てが煌めく道となることを彼は証明しました。
フォアマンに訪れた2度目の世界タイトルマッチ
戦う伝道師・ジョージ フォアマンにもう一度世界挑戦のチャンスが訪れます。
対戦相手はマイケル・モーラー。
フォアマンを破ったイベンダーホリフィールドを倒し、チャンピオンとなった男です。
マイケル・モーラーはフォアマンよりも18歳も若いチャンピオンです。
対戦が決まった時点でフォアマンの勝利を信じている人は、家族と彼のトレーナー以外にいなかったでしょう。
というのも、フォアマンは練習でも精細さを欠いていまいした。
インターバルを挟まずに12ラウンドを連続でこなしたスパーリングでも“キレ”は全く感じられなかった。
重そうな身体からは年齢という重圧が彼の上に大きく圧し掛かっているように思えたのです。
そんな中、フォアマンが取材陣に隠してやり続けてたことがあります。
自分自身を変える作業
フォアマンはスパーリングを終えると、トレーナーと別室へ移りました。
取材のカメラは同室へ入ることを拒否されましたが、ドアの隙間から鏡に映ったフォアマンの姿をカメラは捉えていたのです。
フォアマンはひたすらメディシンボールを腹に打ちつけ、腹筋を鍛えていたのです。
フィジカルな面を徹底的に鍛え直すフォアマンはボクサーとしての自分を取り戻そうとしている様でした。
ボクサーとしての自分。
それは若かりし頃にフォアマンの中に眠っている記憶です。
むかえた試合前の記者会見。
ジョージ・フォアマンはどこか違っていました。
眼光は鋭くチャンピオンのマイケルモーラーに食って掛かっていくのです。
モーラーが「皆はジョージのことは知っているが俺のことは知らないだろう」と発言すると
フォアマンはすかさず「おまえは俺のなにを知っている!」とモーラーに詰め寄ります。
いつもの穏やかなフォアマンからは想像もできない姿でした。
相手を睨み威嚇する。
私はこの会見をみて分かりました。
ジョージ・フォアマンは自分が全盛期に“持っていたもの”を取り戻そうとしていたのです。
イベンダー・ホリフィールドとの試合に挑んだフォアマンは自分に何が欠けていたのかを悟ったのではないでしょうか。
世界を制したことがある男は、チャンピオンになる為には何が必要かを知っていた。
メンタルこそが肉体を蘇らせる。
自らを鼓舞するように若いチャンピオンに噛みついているように感じました。
取材陣に隠して腹筋を鍛えていたときから、フォアマンは世界のベルトを奪取するために必要なものを蘇らせようとしていたのです。
世界に挑むフォアマンが手にしたもの
1994年11 月5日。
緊張の糸が張り詰めたリングに試合開始のゴングが打ち鳴らされました。
序盤から予想されていた通りの一方的な展開。
フォアマンが劣勢に立たされる。
スピードと的確なパンチで若いチャンピオンが主導権を握り、ポイントとフォアマンの体力を奪っていく。
打たれているフォアマンですが、眼光の鋭さは保っています。
モーラーのパンチではフォアマンの精神を断ち切ることはできなかった。
「諦めない者」だけが手に入れられる瞬間が10ラウンドに訪れる。
一瞬・・・モーラーのガードが空きアゴが晒される。
わたしはこの瞬間、モーラーが止まった様に見えた。
武道で言うところの「居着き」がモーラーにあった。
モーラーの気の緩みか・・フォアマンがそう仕向けたのかは不明。
動的な流れの中にあり「居着き」は命取りになる。
フォアマンの右ショートストレートが吸い込まれるように、モーラーのアゴを貫いた。
一閃。
仰向けに倒れたチャンピオンは10秒以内に立ち上がることができなかった。
ここに45歳10ヵ月の世界ヘビー級チャンピオンが誕生した。
人生とは全て一瞬のうちに決まる。
ですが、その一瞬の為に弛まぬ努力を積み重ねが存在する。
映像で見ればわかりますが、狙って打てるパンチじゃありません。
長い練習期間と試合の流れの中で掴んだタイミングでフォアマンはパンチを放っただけ。
世界チャンピオンになる為に彼は試合前から精神的な「強さ」「タフネス」を取り戻すその瞬間、最年長世界ヘビー級王者が誕生した。
それではその映像をどうぞ↓
フォアマンの言葉が、今でも私の心に響いている。
「老いは恥ではないのだよ。」