ユナイテッドアローズに足繁く通って手に入れたCHROME HEARTSのレザーパンツ。
CHROME HEARTSを教えてくれたユナイテッドアローズのスタッフ(以下UAスタッフ)はCHROME HEARTSに対しての哲学を持っていました。
ジャラ付け路線に走ってしまいそうな若い僕を制止し、CHROME HEARTSを熱く語ってくれました。
僕がCHROME HEARTSを初めて身に着けたのは(20~21歳、1995年か~1996年頃)にロンTを買ったのが最初です。
次がクロスペンダント(シルバーアクセサリー)を同年に購入。
当時は38,000円という今から考えると破格といえる安さです(笑)
僕自身、CHROME HEARTSはアクセサリーブランドとしての概念しか持っていませんでした。
丁度その前後に「こんなん着てたらあかんで事件」があったのです。
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こんなん着てたらあかんで事件とA&G
当時の僕はヘルムートラングのパンツにビッケンバーグのブーツ、DスクエアドのTシャツといったモードバリバリの時期でしたが、
知人はその路線から外れてA&Gのブルゾンにデニムパンツという恰好だった。
知人と心斎橋からアメリカ村をブラブラして「CHROME HEARTSを見に行こう」ということでユナイテッドアローズに立ち寄ったときにそれは起こった。
平日の夕刻、人も疎らのユナイテッドアローズの店内。
CHROME HEARTSが売られているディスプレイ前でアイテムを見ていると、当時のCHROME HEARTS担当スタッフが近づいてきた。
レザーパンツに白のスウェット、レザーベストという全身CHROME HEARTSの鎧を身に着けたスタッフは僕たちに話し掛ける。
CHROME HEARTS担当スタッフは知人が羽織っていたA&Gのブルゾンの肘部分をおもむろに人差し指と親指でつまみ
「こんなん着てたらあかんで」と言い放った。
その場の空気は一瞬止まった。
猶も続けるも続けるUAスタッフ「こんなん着てたらあかんわ。」と。
そして、CHROME HEARTSのディスプレイ内にあったRichardの写真を指差し・・
「Richardは何て言ってるか知ってる?」と知人に訊ねる。
知人は「CHROME HEARTS意外は全て偽物」と答える。
するとスタッフは「そう、これ着るんやったら、こっち着なあかんわ」といいながらCHROME HEARTSのライダースジャケットを持つ。
知人はまるで静止画の様に止まっていた。
そりゃそうだろう。
ユナイテッドアローズにCHRIOME HEARTSを見に行ったら、羽織っていたのがA&Gだったばかりにスタッフに説教されたのだ。
いまなら大問題になっていたこの事件。
その事件の直後、僕はそこに置かれていたCHROME HEARTSのロンTeeを買っていた。
CHROME HEARTSのオーラとプライドにヤラれてました。
こういった事件を味わった僕としては「CHROME HEARTS」と「A&G」が雑誌SENSEで同号内に掲載されているのを不思議に思うのです。
客に「こんなん着てたらあかんで」というぐらいなんですから。
A&Gは当時のユナイテッドアローズにとっちゃそれぐらいのブランドだったんです。
矜持と誇りを共有するCHROME HEARTS
いま考えても凄いと思うのは、販売員ですらそこまで酔わせてしまうCHROME HEARTSの魅力です。
魔力というべきかも(笑)
ユナイテッドアローズのスタッフもCHROME HEARTSに対する愛情が深かったからこそ、中途半端な金を出してジャケットを買うなら、もう少し金を積んで「こっちの世界へ来い」と言いたかったのでしょう。
今ならそれが分かります。
ロンTee、クロスペンダントから時間を有し、ぼくはケルティックローラーのウォレットチェーンを購入しました。
僕が「K師匠」と話をしたのはこの頃からです。
僕もまだクロムハーツを所持するといってもロンTEEとクロスのペンダントだけでした。
しかも買ったばかりのROLEXにウォッチケースを入れてくれと持っていくと師匠はロレックスJAPANから輸出入に関して制限が掛かったためUAでは取り扱いできない。
ということとアクセサリーにそんなに金を掛けるもんじゃない。と示唆ししました。
いや示唆というか、ハッキリとそう言いました(笑)
K師匠は「CHROME HEARTSはアクセサリーブランドじゃないですからね」と言い、レザーパンツを薦めてくれました。
シルバーアクセサリーブームの真っ只中にあって、誰も彼もが「クロムハーツクロムハーツ」と言って集るのを嫌ったのではないかと思います。
いわば若者たちはストリートマガジンで語られるクロムハーツ象を頭に描いていたので無理もありませんが、クロムハーツを知らない者が語るクロムハーツに憤慨していたのでしょうか。
僕もそういった若者の一人でした。
ただ、ストリートマガジンのような「一過性の盛り上がりを見せるノリ」があったからこそクロムハーツの知名度は一気に上がりスターダムへと登りつめたのです。
当時から、芸能人がブランドを身に着けテレビに出演し、スタイリストがソレを語り、ストリート雑誌で掲載する。という現在とあまり変わらない売り出し方というのは既に鉄板としてありました。
僕も自分が所有するガボールやクロムハーツ、その他ブランドと同じものを身に着けていたり、自分が先に着けていたものを芸能人がテレビで着ているのを見ると優越感に浸れたものです。
それも彼らの術中なのですけど・・・(笑)
洗脳こそブランドの命
ブランドは洗脳です。
いかに顧客のマインドをコントロールするかという部分が強い。
僕なんて完全にコントロールされていますよ。
自覚もある。
だって、レザージャケットやレザーパンツに100万や70万も出すんですよ。
祖母がそんな値段の「壷」を買ったらどうしますか??
止めますよね?
その価値の分からない人からすれば洗脳されていると思うでしょう(笑)
洗脳をする側は僕達に実感できるようにリアリティを作ります。
CHROME HEARTSの空間(店舗)がまさにそのリアリティ。
天井に飾られたクロスのレリーフにマホガニーやエボニーを用いた家具。
シルバー、煉瓦の石畳。
全てがリアリティを演出するためのツール。
世界にある基盤店があるからこそ、SC内に入ってもCHROME HEARTSは異彩を放つことが出来るんです。
だけど、そこまで到達するのがなかなか難しい。
CHROME HEARTSがブランド創設当初からスピリチュアル的な要素を大切にするのはそういうことなんだと思います。
ただ、Richardはそういう狙いがあってやっているのでは無いでしょう。
魅力溢れるもんを作り出した結果としての洗脳があったのです。
言葉を引き受けるCHROME HEARTSの器は我々がそうぞうする以上に大きいのです。
精神世界の中で生きる
僕たちはもうCHROME HEARTSから離れられません。
身に着けた期間が長ければ長いほど放っておいてもCHROME HEARTSを求めます。
洗脳を自覚する僕でさえそう断言できる。
人間の身体には限界があり、精神世界は無限。
洗脳された僕たちはもうCHROME HEARTSの無限ループに入ってしまった。
限界効用の逓減を味わってもなお僕たちは前に進むしかない。