奥山清行さんのフェラーリと鉄瓶を読むと
ブランドとの本当の付き合い方が見えてきます。
日本ではブランドが独り歩きをしている感がありますが
決してそうではない国がある。
ブランドと人(顧客)との付き合い方について考えたいと思います。
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人(客)が育てるブランドの本質
日本の女性たちにはイタリアのブランドが大人気ですが、
そういうブランドがどうして出てきたかは、考えたことがないのではないでしょうか。
イタリアの大学は五年制ですが、卒業しても二年くらいタダ働きをさせられます。
インターンシップ制度が社会の中で確立しているわけです。
その後やっと仕事を見つけて就職しても、もらう給料が手取り七万円。
女の子たちはその給料を一生懸命に貯めて、毛皮を買うんです。
そういう時に買う毛皮は、ロングコートです。
仕立てを変えるたびに、ちょっとずつ短くすれば、お婆ちゃんになるまで一生着られるからです。
着物と同じ考え方ですね。
「若い人が毛皮を着ているから、イタリア人はお金持ちだ」なんて観光できた人は思うかも知れませんが、みんなすごく先のことを考えて買っているんです。
プラダとかグッチなどのファッションは、そういうお客さんたちが育ててきたものです。
一生モノと呼ばれるモノの基本的な考え方があると思います。
高額な商品というのは、基本的に先行してお金を支払っているということです。
「この洋服を一生着る気がある」からこそ将来の事を考え高額な洋服を買う。
そしてサイズをリフォームして何年も使い続ける。
CHROME HEARTSのリチャード・スタークも写真集のインタビューの中で
同じことを言っていますね。
私たちファンは、クロムハーツとどう付き合っていけばいいのでしょうか。
例えば5年前にパンツを買った人がいたとして、革が伸びてサイズが大きくなったりして、はけないようなことになったら、僕のところに送ってほしい。
そうすれば、無料で直す。
確かにクロムハーツは値段が高いけど、それだけの値段を払っても10年経てば、それが高くないことに気付くハズさ。
それから“お下がり”って最近じゃあまり聞かれなくなったけど、子供用のパンツなんか代々、子供たちに譲っていくっていうはき方をしてほしい。
それが、継承っていうものだと思うし、そのなかのひとつにクロムハーツがあれば幸せだよ。
※海外では無料で直してくれます。
これが基本的なCHROME HEARTSの考え方、哲学・思想です。
高額なのにはそれだけの理由がある。少なくともこの頃までは。
ですが、ビジネスは其れを許さない。
ビジネスは金儲けだから。
コストを上回ることを決して許さない。
だからCHROME HEARTSは懐の深さを失いつつある。
器量というのは自分が損をしてでも他人を助けるという「大きさ」にある。
恰好良さは気持ち(心)の在り方にある
使えるお金は決して高くはないけれども、いいものを長く着たいという人たちのために、お店は商品を作っているんです。
つまり、お客さんが商品を育て、ブランドを作るという循環が、いい意味でずっと続いているわけです。
観光で日本から札束を持って買いに行く人たちには、そういうことの意味は分からない気がします。
単にグッチが買えればそれでいいというものではないのです。
お店に行って、顔見知りの店員たちと話をして「今日はいいものがありますよ」と自分だけになにかを見せてもらう。
数が限定されてるような商品も見せてもらって、気に入れば買う。
その全体のプロセスが大事なわけです。
日本でも昔はそうだったはずです。
なじみの店で話をしながら買うのが普通だったのではありませんか。
そういうプロセスの中からブランドの価値が出てきているとわかれば、にせものを買うことの無意味さが認識できるでしょう。
見た目のハードだけあればいいというのでは、ブランドを愛する心とは言えません。
逆にイタリア人の人たちは、見た目なんかわかってもわからなくてもいいんです。
購買に至るプロセスと、本物を手に入れたという満足感だけがあればいい。
それがブランド品を買うことの本当の意味だと、イタリア人たちは考えています。
見た目を重視させてしまうファッション誌の作り方にも問題があるのかも知れませんね。
イケメンのモデルを使いアイテムを見せ購買をそそらせ店に向かわせる。
そしてブツだけ手に入れてお終い。
それが悪いと言っているのではなく、自分の目でモノを見れない人が増えているんじゃないかな?と思うのです。
他人のモノが良く見えるのは仕方ありませんが、そこから学習せずに延々と買い物を続けてしまう人が多いのではないかと。
だから使いもせずに売ってしまう。
男性が女性にブランド物を貢のもそれに拍車をかける。
そういう意味ではイタリアの女性たちは精神的に大人なんだろうなと思います。
手にするお給料が少ないからモノを選ぶのにも慎重に真剣になる。
だからブランド側も気を抜いてモノを作れない。
職人たちの技で買う側に納得してもらう必要があるのです。
奥山さんが「ブランドを作るという循環が、いい意味でずっと続いている」というのはそういうことでしょう。
そして、ブランド品を購入するまでのプロセスを大切にしているからこそ簡単には手放せない。
こういう考えは肩が凝るとか、堅苦しいと思うかもしれませんが
私はクロムハーツと一生付き合う気持ちで買っています。
クロムハーツではクロスパッチの修理が有料になりましたが、
大阪店のスタッフは決して売りっ放しにはせず、私にとって最良の解決方法を考えてくれます。
そういったスタッフとのコミュニケーションからなるモノには特別な存在感が生まれます。
購買に至るプロセスからなる満足感を大切にしていけば、
その商品は一生モノと呼べるものになるのではないでしょうか。