NHKで放送されていた「プロフェッショナル 仕事の流儀」でWBSSで優勝した井上尚弥選手が特集されていました。
井上選手は昔のダメダメだったプロボクシングとボクシングジムの運営、テレビ、マスコミに対して辛辣なコメント放っています。
世界のトップに君臨する井上選手は真剣にボクシングのことを考えていることが分かります。
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井上尚弥選手のボクシングに対する考え
自分がプロ転向する時のプロボクシング界が好きじゃなかった。
勝てる相手を選んで試合をする。
それがテレビで流れちゃうっていう時代だったんで
それはそうじゃないなって思ったし
やっぱりボクシングっていうのは真剣勝負
どっちが勝つかわからない試合をするからお客さんが熱くなるわけで
辰吉丈一郎さんだったり畑山隆則さんだったり、あの沸かした時代を取り戻したいのがあったんですよ
それはパフォーマンスで客をひきつけるんじゃなくて
ボクシングを見に来たお客さんであふれ返したかったんですよ。
NHK プロフェッショナル仕事の流儀より
皆さんは誰の顔が思い浮かびました?
もう率直に言いますけど亀田三兄弟だと思います。
実際は「勝てる相手を選んで試合をする」は亀田選手たちから始まったことではないです。
ですが、そういう印象を持たれても仕方がないボクシング界であったと思います。
勝てる相手を選んで試合をする。
かませ犬を選んで試合をする。
タイ人・フィリピン人のやる気のないボクサーと試合をする。
自分がいたボクシング界もまさにそんな時代の真っただ中だったように感じます。
僕たちが井上選手の魅力に引かれたのは、ボクサーとしての本質の部分に率直に生きているからなんです。
強い相手と試合がしたい
ボクシングだけに限らず、勝負の醍醐味は強い人間同士の戦いです。
否が応でも盛り上がる。
ノニト・ドネアと同国のスーパーチャンピオンであるマニー・パッキャオもそうですが、強い相手を選び戦い勝利を掴みとっていく。
その姿に男が惚れたのです。
試合とは勝負の日まで己の心技体を鍛え上げ、自らの力を試し合う。
本来は強い相手と対峙することで自分を知ろうとする行為なのではないでしょうか。
自分の弱点を突いてくるからこそ、自分の弱さが分かり成長がある。
だからこそ強い選手とやる意味があるのです。
自分より弱い選手は自分の弱点を突けません。
ヒリヒリるような緊張感を味わえるということは、そこに伸びしろを見出し自分の成長させる機会を得られるから井上尚弥選手は強い相手を選んで戦う。
今回の試合は戦いの最中に様々な試練があったと思います。
それを乗り切り彼は勝利を掴んだ。
海外メディアがWBSSの決勝戦を高く評価したのはそこにあるのです。
井上尚弥選手は試合中に間違いなく成長したのです。
そして世界のトップに君臨した過去の選手たちは、ボクシングをそのように捉えているのです。
しかし、ボクシングは井上尚弥選手みたいに強気のマッチメイクばかりやれる状態にないのが現状です。
強い相手と試合が出来ない理由
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なぜ、ボクサーが強い相手と試合が出来ないのか?
これはボクサーだけに責任がある問題じゃないのです。
「弱い相手を選んで試合をするボクサー」の周りにいる人間に問題があるのですよ。
ボクシングの世界タイトルマッチには興行権(オプション)が存在します。
興行権(オプションとは)
「オプション」という不思議な慣習
「オプション」とは、ボクシングの世界タイトルマッチに慣例として存在している権利だ。わかりやすくいえば、
世界タイトルに挑戦するとき、王者側が「うちの世界王座に挑戦させてあげるから、もし、あんたのところのボクサーが勝っても、
○回分の防衛戦はうちのほうでいつどこで、誰とやるのか決めさせてもらう」という約束だ。たとえば、内藤が3度目の挑戦でポンサクレックからベルトを奪取したとき、敗れたポンサクレック陣営は2試合分のオプションを保持していた。
つまり、挑戦を受けるかわりに、2度目の防衛戦までは前王者側が挑戦者を選べるというカードである。
陣営がこのオプションを行使した場合、ポンサクレックと同じ人物がマネージャーを務めるタイ人のランキングボクサーが初防衛戦の相手として有力視された。
ボクシングが好きな方なら、
「ボクシングは世界チャンプになるだけじゃ稼げない」
という話を聞いたことがあるでしょう。
理由はこの興行権(オプション)にあります。
何度か防衛線を行わないと興行権が勝ったチャンピオン側に回ってこない。
興行権は権利なので、お金のあるジムは興行権を買い取ってしまいます。
ボクシングジムも興行をやる以上は稼ぐ必要があるので、人気のある選手を作りたい。
人気のある選手を育てるためにマッチメイクに気を使い勝てる相手を選んでいく。
日本人選手の試合にタイ人やフィリピン人が多いのもそのためです。
素人に強く見せるための戦績(レコード)
スター選手は強くなければいけない。
強さを素人でも分かりやすくすのは戦績(レコード)が大切なのです。
「30戦25勝14KO 3敗2引分け」よりも「20戦20勝18KO」の方が数字だけなら強く感じます。
しかし、それにタイ人やフィリピン人にしても強い選手は強いですから、戦績を見ただけじゃ咬ませ犬なんて判断できません。
このように勝てる相手をジムが選んで試合をすればそれなりに強く見える。
それに、ジムが力を入れる選手というのは、もともと才能がある選手なのです。
たとえそれが咬ませ犬でもプロのリングで勝利を掴むうちに自信がつきそれなりに強くなる選手もいる。
このようにしてデビューしてからタイ人を倒しまくってスター選手をテレビとジムが作ってしまった。
スポンサーに作られたプロボクサー
ここ最近のテレビメディアが抱える問題点は、彼らがコンテンツの1つとしてボクサーを品定めしていることだ。
TBSのプロデューサーたちは亀田兄弟の実力を正確に把握し、彼らの成長をじっくりと見守る余裕が持てなかった。
やくざ口調の話し方や相手を侮辱するパフォーマンスを映像で流し、弟が試合後のリングで歌まで唄う姿をまるで歌謡ショーのように演出した。世界戦での反則行為に端を発した亀田騒動はTBSを中心にしたメディア批判にもつながったが、その陰で力はあってもメディアから正当な評価を得られず、
十分な資金を集められずに世界戦のチャンスをつかめなかったボクサーたちの存在はあまり語られていない。
亀田家にヒール役を与え視聴率を稼ぐやり方は炎上商法です。
しかし、炎上商法の寿命は短い。
炎上は人を怒らすことで注目を浴びせるので気分が悪いんですよね。
しかし本当のボクシングはそうじゃい。
井上選手のいう強い相手を選んで戦う真剣勝負の世界があるのです。
井上尚弥選手のように強い相手を選び、勝ち進んでいくと世界トップクラスの主戦場が広がっています。
そこには生半可な選手は立ちいることができない空間。
自らを高見へと上げる向上心と好戦的に緊張感を味わえる選手が揃う、ボクシングの本場アメリカのリングがあるのです。
アメリカ ボクシングプロモーター トップランク社と井上尚弥
アメリカのボクシングプロモーター トップランク社のトッド・デュボーフ社長は井上尚弥選手について語ります。
井上の次のステップは世界で名をとどろかせることだ
モハメド・アリやシュガーレイ・レナード
デラホーヤ、メイウェザー、パッキャオのように・・・
井上選手は世界トップファイターたちと名を連ねることになるでしょう。
昨年、MONEYブームを引き起こしたメイウェザーの名前もありますね。
メイウェザーはここに名前を挙げられる選手なのです。
日本でのエキシビションがどれだけ簡単な仕事だったかが分かるでしょう。
そんな世界に君臨するボクサーたちに日本のボクサーが名を連ねる。
まるで夢のようです。
まさか、僕が生きているうちに、こんな選手が現れるなんて夢にも思いませんでした。
これは井上尚弥選手だからこそ成し遂げた偉業なのです。
血が滲む努力の末に勝ち取った世界のリング。
そこが主戦場となる2020年からの井上尚弥選手の活躍が楽しみです。